越後三山周辺 涸沢山(633m)、トヤの頭(671m)、駒の頭(680m)、黒禿の頭(770m)、笠倉山(907.2m) 2013年4月6日

所要時間 5:00 5:55 湯之谷健保センター−6:48 558m峰(桑原山)−−7:26 涸沢山−−8:08 トヤの頭(休憩) 8:23−−9:09 駒の頭−−10:01 黒禿の頭−−10:04 林道−−10:35 笠倉山 10:39−−11:07 林道(休憩) 11:28 −−11:57 554m峰−−12:37 486m肩−−12:53 芋川沢右岸−−12:58 湯之谷健保センター

場所 新潟県魚沼市/南魚沼市天気 晴のち曇
年月日2013年4月6日 残雪期日帰り
天候晴のち曇
山行種類残雪期の藪山
交通手段マイカー
駐車場湯之谷健保センター付近に駐車スペースあり
登山道の有無健保センター〜558m峰、駒の頭〜黒禿山〜林道〜笠倉山は道あり
籔の有無あり。全行程の1/5くらい
危険個所の有無笠倉山北東肩の下りが急で露岩あり
山頂の展望各ピークとも良好
コメント芋川沢源流山脈を反時計回りに馬蹄形周回。予想以上に雪が少なく尾根上の雪が落ちて潅木藪が出てしまっている箇所が多く、全行程の20%くらいが藪漕ぎ。積雪のため正確な情報ではないが、健保センター〜558m峰、駒の頭〜黒禿山間は〜林道は道あり。もしかしたら林道から笠倉山間も夏道があるかもしれない。無雪部分は潅木藪が主流だが、どうにか我慢できる範囲で人によっては無雪期もOKかも。もう1ヶ月早ければ藪とはおさらばかもしれない。ただし、笠倉山北東の880m肩〜850m間が露岩混じりの急な尾根で、雪の付き方によっては危険が伴いそう。これ以外に危険箇所は無い。今回はアイゼンもワカンも使用しなかった。どの山頂も雪庇の上で立ち木は無く大展望を楽しめる




健保センター近くの路側に駐車 湯之谷健保センター
健保センター前の芋川沢にかかる橋 健保センター駐車場のこの斜面を登る
広い斜面を登る 尾根に乗る
杉植林。花粉真っ盛り 毛猛山と檜岳
道があるような?
本当に夏道があった。ちょっと残念 夏道はよく整備されている
本日歩くルート(クリックで拡大)
毛猛山と檜岳 芋川集落が低くなっていく
夏道 奥のピークが558m峰(桑原山)
558m峰(桑原山)から見た展望(クリックで拡大)
涸沢山への尾根は雪が落ち灌木藪が続く。夏道無し 灌木藪。かなりスピードダウン
僅かでも雪が残っていると楽だ〜
雪に乗るとほっとする
このピークが涸沢山 涸沢山直下の雪壁
涸沢山山頂。雪庇の上 涸沢山山頂
涸沢山から見た展望
涸沢山から見たトヤの頭 涸沢山から見た桑原山方面
涸沢山から先もまた灌木藪 この雪棚が落ちるのも時間の問題だろう
露岩。灌木藪が切れる
トヤの頭までもう少し
トヤの頭直下
地形図上のトヤの頭から見た最高点。明らかに高い トヤの頭最高点
トヤの頭最高点から見た笠倉山までの尾根
トヤの頭最高点から見た展望(クリックで拡大)
トヤの頭最高点から見た越後三山(クリックで拡大)
トヤの頭最高点から見た毛猛山と檜岳
地形図上のトヤの頭へ向かう個所は木を切った跡あり 地形図上のトヤの頭から南へ下る尾根は灌木だらけ
下りなのでまだマシ
雪が残る西斜面へ逃げる 鞍部で籔尾根に復帰
トヤの頭を振り返る。尾根上に雪は無い 標高600mを越えると雪が続く
標高600m肩から見た登ってきた尾根
駒の頭へと緩やかに登る。雪が続く 右手は杉植林
駒の頭山頂西側直下 駒の頭山頂
駒の頭からの展望
駒の頭から見たトヤの頭と涸沢山
駒の頭北東尾根。かなり籔が出ている 尾根上には恐怖の杉植林帯
650m峰へと登る 650m峰の下り。やけに灌木藪が無い
雪があるところは雪の上を歩く 鞍部へ向けて下降中
ここも尾根上の籔が少ない 今年初めてのカモシカ目撃。これで100m先くらい
これは200m先くらい(光学6倍ズーム) カモシカを追って651m峰へ
さっきのカモシカの足跡 650m峰を振り返る
651m峰
651m峰から見た笠倉山、黒禿の頭
630m鞍部付近。夏道?? 刃物跡あり。整備されているらしい
黒禿の頭の登りにかかる フィックスロープありなので間違いなく夏道
細い尾根上は道も明瞭
黒禿の頭直下。雪に埋もれた林道が見える
黒禿の頭山頂。山頂標識あり 黒禿の頭から西に延びる尾根。登山道あり
林道へ下る。夏道あり 林道。登山道入口に案内標識あり
笠倉山方向は法面で上がれない 雪に埋もれた林道で稜線南を巻く
林道から見た笠倉山
適当な小尾根から取り付く。夏道あるはずだが積雪で不明 尾根に出る
古い足跡 雪庇が発達した稜線。崩壊注意
最後の登り 笠倉山山頂。強風のため休憩無しで下る
笠倉山からの展望(クリックで拡大)
直上をヘリが通過 北東尾根を下る。踏跡あり
西尾根の展望 まだ籔は薄い
標高880m肩より痩せ尾根を下る。急なナイフリッジ ここだけバックで下った
ナイフリッジの次は灌木藪の急斜面 露岩登場。ヤバい雰囲気・・・
境界標識あり 下ってきた岩稜
ちょっとしたナイフリッジ。登りならどうってことはない 820m峰目指して下る
820m峰を巻き、直下で北に進路変更 北〜北東に続く尾根
笠倉山を振り返る 籔があるものの東か西に迂回可能個所多し
ここは西側を迂回 標高761m肩
広い尾根を下る 雪に埋もれた林道で休憩
林道を出発 これから歩く尾根。かなり雪が落ちてしまっている
巻けるところは西を巻く 稜線東の雪庇はズタズタ
560m峰向けて登る イワウチワ。標高が落ちると満開状態だった
尾根上は灌木藪が酷い 560m峰から見た554m峰
灌木藪を避けて西を巻いている最中 灌木が薄くなってきた
でもこの先も雪が落ちている 554m峰から見た東に延びる尾根
北上する尾根は雪が少ない
雪が出るとほっとする 強風が吹くと杉から黄色い煙が・・・
490m峰
500m峰肩見た展望(クリックで拡大)
486m肩から見た380m峰 北西へ下る
もう灌木ではなく笹藪で楽になった 先端の平坦地が420m肩
420m肩で西に向かう 杉植林と自然林の境界
尾根上の雪が落ちてまた灌木藪 下ってきた尾根
対岸は往路で登った尾根 健保センター
雪を求め尾根を外れて西に下る 芋川沢右岸に出た
水量多く橋でしか渡れない 下ってきた尾根
往路の足跡


 週末は「爆弾低気圧」の接近により土曜夕方から大荒れの予報が出ていた。関東甲信越もお昼頃から雨の予報で、雨の降り出しが一番遅い新潟方面に出かけることにした。午後の天気がやばいので半日くらいで歩ける場所、強い南風が避けられるよう北側から登れること、山の数が稼げること、残雪期しか歩けない山であること等、複数の条件を勘案して地図を眺め、旧湯之谷村の芋川沢の源流部の山を巡ることにした。右岸、左岸の尾根上にある山の数は5山と効率がいいのが特徴で、標高は低いが豪雪地帯なのでまだ雪は充分あると考えた。ただ、藪が全く出ていないとまでは期待していないので、周回方向は反時計回りとして登りで使う尾根は東向きとする。通常、西向きの尾根より東向きの尾根の方が残雪量が多いからだ。それにこの周回方向なら少し登れば涸沢山に到着し、トヤの頭、駒の頭と短距離で次々とピークが稼げて、予想より早く天候が崩れた場合、駒の頭や黒禿の頭で切り上げて芋川沿いの林道に下ってしまう手が使える。逆周りだと最初の笠倉山まで距離があって時間がかかるため、下手をすると1山も山頂を踏まないで終わってしまう可能性もある。

 小出ICで降りて国道352号線を進み、芋川橋を渡って湯之谷健保センターの案内で右に入る。案内が次々と出てくるので迷うことは無く、やたらとでかい建物が登場。これが健保センターだった。この前で車道が芋川沢の右岸/左岸を渡るので、帰りに芋川沢右岸尾根を下って車道に出ることが可能なので、ここを起点とする。芋川沢は水量が多く橋かスノーブリッジがなければ渡るのは不可能だった。健康センターの駐車場を使うのは申し訳ないので、除雪で広くなった車道のカーブに車を置いた。天候はまだ晴れていて風も弱く、今のところ荒れる気配は無い。ただ、朝から気温が高く雪の締りがない。一応、ザックにワカンをくくりつけた。

 出発して健保センター駐車場から斜面に取り付く。雪はクラストしていないが踏みぬくこともなく、足の甲の深さに潜る程度。許容範囲か。立ち木が無い広い斜面を登って左手の小尾根に取り付いて高度を上げる。最初から雪は充分で地面が見える部分は少ない。上部で小さな杉植林に入るが日当たりの悪いが踏み抜きはなかった。

 結構な傾斜で尾根を登っていくが、特に傾斜がきついところでは雪が落ちてしまった場所もあった。そこにあったのは藪ではなく歩きやすい植生だった。なんか踏跡がありそうだ。進んでいくと倒れた標柱があって「桑原山頂」の文字が見えた。この尾根には夏道が存在したのだ。準備した地図の範囲は必要最低限なので桑原山がどこにあるのか不明だが、もしかしたら笠倉山や黒禿の頭のある主稜線かもしれないなんて考えたりする。その場合、残雪期に来た意味がなくなってしまう。今さら行き先を変更するわけにもいかないのでこのまま計画続行。

 いい傾斜が続き、かなりの区間で尾根上の夏道が出ていて歩きやすい。ずっと続いた登りが終わって雪庇に覆われた最初のピークに到着。ここが558m峰だ。地面は雪の下なので夏道や山頂標識の有無は不明。雪のおかげで無雪期より2,3m高い場所となっていて低い灌木に邪魔されることもない展望が開ける。北は上下の権現堂山と唐松山、東は毛猛山と桧岳、南東側は荒沢岳に越後駒ヶ岳が目立つところだ。本日の最高点の笠倉山はさほど遠くないが、尾根はずっと西を迂回するような形でつながっているので直線距離の2,3倍はあるだろうか。まだ風はほとんど無く天気も良好、先に進む。

 下りは少しの間だけ残雪が利用できたが、尾根が曲がって痩せて南側が切れ落ちると雪も落ちてしまい、尾根直上の灌木藪漕ぎ開始だ。夏道は無く、標識の桑原山は558m峰を指していたようだ。標高が低いのである程度の藪漕ぎは覚悟の上だが、こうも早々と登場するとは。まだ根曲がりではないのでマシだが、残雪を歩くよりスピードは1/4くらいに落ちる。細い灌木はまだいいが太いやつや、地面付近から横にたくさんの枝を張り出した小型の照葉樹はかき分けるのも大変だ。迂回するにも尾根が痩せているので真上からずれると横に生えた状態となり最悪だ。おまけに今日は気温が高くすでに12℃を越えている。長袖シャツは暑くて死にそう、Tシャツだと腕が傷だらけ。帰って風呂に入ったらズボンを履いていた足も傷だらけだった。ここは1カ月くらい早く訪れるべき場所のようだ。

 鞍部から緩い登りに変わってかかってやっと少し雪が出てくるが、550m肩を越えると灌木藪に逆戻り。570m小ピークを越えてその先の鞍部まで灌木藪漕ぎが続くが、登りに変わるとコンスタントに雪が現れて大助かり。ただ、南に残った雪庇残骸が途中で割れて一時藪尾根に退避したり、急な登りでは雪が落ちて藪漕ぎだったりと、ずっと雪に乗れる状態ではなかった。尾根上で雪が割れて壁になった個所では立ち木とピッケルを使って強引によじ登った。

 涸沢山山頂直下でやっと雪が安定して続くようになり雪庇に覆われた山頂に立つ。山頂西端は地面が少し出ていたが山頂標識や夏道は見られなかった。ここも雪の高さでかさ上げされていて見晴らし良好だった。

 トヤの頭に向かっての出だしの下りもいきなり灌木藪で始まった。尾根から少し落ちた位置に雪庇残骸がひっかかっていて、これに乗ってスピードアップ。しかし鞍部手前から雪が落ちて長距離籔漕ぎ。涸沢山からトヤの頭間の大半の区間が雪が落ちて灌木藪が出てしまっていて苦労した。夏道は全くないし、灌木なので獣道も無い。途中、小規模な露岩があったがそこだけ藪から解放された。トヤの頭直下の登りも灌木藪で木の寝方が「逆目」なので鬱陶しいことこの上ない。

 山頂部分東端は雪庇になっているが、灌木藪と雪面の高さの差は3mくらいある垂直の雪壁で登ることができず、雪の下敷きになって寝ている滑りやすい灌木を踏みつけながら右に迂回して雪に乗った。最初のピークが地形図に記載された671m標高点のトヤの頭山頂だが、実際にはその西側のピークの方が明らかに高い。小鞍部に出ると雪が消えて再び灌木藪の登りになるが、今までと比較して明らかに藪が薄かった。よく見ると鋸で切ったような切り口の木も見られ、ささやかながら刈り払いされたらしい。でも夏道レベルではないな。もしかしたらこの先の鳴倉山から踏跡が続いていたりして。

 トヤの頭最高峰も雪庇に覆われた山頂で視界を遮るものはなし。ここまで来ると笠倉山も近くなってきた。雲が徐々に増えてきたがまだ風は弱く天気は持ちそうだ。最悪、次の駒の頭で切り上げて北東尾根で下山する選択もあったが、この分なら先に進めそうだ。雪庇南側の日当たりのいい場所で休憩。雪の踏み抜きは無いとはいえ、気温が高くて雪が緩んでいるのでそれなりに体力を使わされた。

 休憩を終えて出発。東隣の671m峰に移り南に進路変更。この尾根はずっと灌木藪が出てしまっていた。途中から西斜面の残雪に乗り移り、鞍部付近で再び稜線へ。ちょっと登ると雪が出現し藪から解放される。ブナなどの落葉広葉樹林で、少し登ると右手斜面は杉植林へ変わる。こんなところまで植林するとは。駒の頭山頂付近は再び自然林となり、山頂西側のみ低い灌木に変わり、その東側の雪原が駒の頭山頂だった。ここも山頂標識や目印は無い。そういえば、ここまで歩いてきた尾根上にも目印は見なかったような。

 まだ天気は大丈夫そうなので先に進む。この先は笠倉山の稜線は北側は急で降りるのは危険そうで、笠倉山を越えないと安全に下れないだろう。もしくは笠倉山から往路を戻り、黒禿の頭から駒の頭にかけての尾根のどこから芋川沢に下ることになるだろう。できれば計画通り周回したいものだ。芋川沢に下る場合、林道は左岸側にあるので右岸に下った場合は沢を渡れるかが一番の問題で、半端な場所で右岸に下ってしまうとその後に苦労しそうだ。スノーブリッジで沢が埋もれていればいいのだが、この残雪量ではあまり期待できそうにない。

 駒の頭から僅かに下ると杉植林帯を突っ切る。日当たりが悪い場所なので踏み抜き頻発かと思ったらそんなことはなく締まって歩きやすかった。雪を伝わって650m峰に登り、下りにかかると雪が切れて藪が顔を出すが、今回はなぜか灌木藪が無く地面が出ていた。地形や残雪状況による植生の違いがあるのだろうか。再び残雪に覆われて快適に下り、鞍部付近で比較的長く尾根上の雪が消える場所があったが、ここも今までのような灌木藪ではなく地面が出ていた。まるで夏道のような光景だ。

 次の651m峰を越えて黒禿の頭の本格的な登りにかかるとまた雪が切れて藪が無い地面が出ていた。やっぱり夏道に見える。そして急斜面の登りでフィックスロープが登場して夏道であることが確定した。その上部の痩せ尾根は灌木に覆われていたが、尾根直上は刈り払われて立派な夏道だった。下山後、ネットで黒禿の頭の登山道に付いて検索をかけたが、すべて大力山からのもので駒の頭方向から道があるような記録は発見できなかった。どこかの山であったように、何らかの理由で黒禿の頭直下のみわざと刈り払っていないのであろうか。謎の道であった。いったい起点がどこなのか興味がある。もし駒の頭を経由していないとしたら、芋川沢沿いの林道終点あたりから上がってきているのかもしれない。

 最後の登りをこなして黒禿の頭山頂に到着。意外にも山頂は雪が消えていて山頂標識が立っていた。既に天気は明らかに下り坂に向かっていて、上空は雲に覆われて南風が強くなり、たま〜に突風が吹くようになっていた。このままいくと下山まで天候が持つのか不安になり、かなり足が疲れているがここでの休憩はパスして笠倉山を目指すことにした。あそこまで行けばその後は基本的に下りのみ。天候の悪化は許容範囲だろう。

 黒禿の頭から林道まで、ほぼ全区間で夏道が出ていた。しっかりと刈り払われ、無雪期ならば車で林道の峠まで入って10分程度で山頂に立てるだろう。登山道入口には案内標識が立っていた。笠倉山側に夏道があるのかどうか、歩いていた時点では知らなかったが(下山後のネット検索で夏道の存在を知った)、少なくとも峠の笠倉山側はコンクリートの法面で登るのは不可能だった。ただ、林道は大量の雪で覆われており、峠部分を外せば取りつけそうな場所はあるように見えたが、いやらしいことに笠倉山側の尾根上に藪が出てしまったところが見えていた。このまま稜線上を行くよりも、稜線南側を通る林道を少し歩いて藪が出た場所を行き過ぎたところで適当に稜線に登るのがいいと判断、林道を右に辿ることにした。

 林道の出だしは雪の急斜面だったがすぐになだらかな平面となり歩きやすくなった。こちらの尾根の南斜面は傾斜が緩やかで一面の残雪に覆われていて、半分崖のような急斜面ばかりの北側とは対照的だった。これならどこからでも取りつけそうだ。小尾根が張り出しているところで林道を離れて上を目指す。時々南向きの突風が吹くが耐風姿勢を取るまではいかない。しかし体温を奪うようになり寒さを感じたため、腕カバーとネックウォーマーを装着した。

 稜線上に乗っても雪は豊富で、これまでの藪漕ぎが嘘のような快適さだ。これで青空なら言うことがないのだが。雪面をよく見るとたま〜に古い足跡を見かけたが、たぶん先週末のものだろう。それまで足跡に気付かなかったが、大力山経由で登ったものだろうか。ブナの点在する斜面を登っていくと小出方面からヘリコプターが飛来、上空を通過して越後駒付近でUターンしてまた上空を通過していった。越後駒付近には短時間しかいなかったので遭難者救助ではなさそうだった。私の姿がヘリから見えただろうか。

 ようやく最後の目的地、笠倉山山頂に到着。この時期の最高点は東縁の雪庇であった。山頂一帯は雪原で標識は見当たらず、少し離れた場所に低いブナがあるだけだった。南に向かって尾根が伸び、越後駒まで続いているが、カネクリ山付近はいかにも岩っぽく、残雪期に登れるのか不安になる風景だった。あの界隈もいくつか山があるので登ってみたいところではあるが。

 強風のため山頂は写真撮影しただけで下山を開始する。どこか風が避けられる場所まで下ってから休憩しよう。北東尾根は残念ながら雪が落ちてしまっているが灌木は薄く、しかも踏跡も見られて障害は少なかった。もしかしたらこちらの尾根から登る人もいるのだろうか? 2つ3つ微小ピークが続き、880m肩で方向を東に変えて急激に高度を落とす。ここは痩せ尾根にナイフリッジが付いた状態で左右に迂回はできないのでナイフリッジの歯の上を歩く。幅は恐ろしいど狭いわけではないが、何せ傾斜が急で雪の両側は崖状で落ちればただでは済まないため、念のためバックで慎重に下る。気温が高くノーアイゼンでもキックステップで充分OKで助かった。

 ナイフリッジが終わると尾根が広がるが急傾斜の灌木藪尾根に変わる。灌木に掴まりながら、倒れた灌木を踏みつけながら下っていくと藪が切れ、今度は露岩だ。藪よりも始末が悪そうで、登りだったら上方の先が見通せるのでルート判断が容易だが、下りだと急激に高度を落とす個所は下部が見下ろせる先端まで行かないとルート判断できないのがいやらしい。下を覗き込むまでその先に進めるかどうか分からないので不安は大きい。露岩帯も痩せ尾根で左右に迂回は不能、もしこの先が下れないと笠倉山を再び越えて黒禿の頭まで戻って下山ルートを考えなければならない。

 ゆっくりと露岩帯を降りてゆくと意外にも赤い樹脂製杭が登場、おお、ここを通った人が他にもいたんだ。ということはこの下も通過できる可能性が高い。ヤバそうな岩角から下を見ると着地点まで2mくらいまでしかなく、途中の手掛かり足掛かりも問題なさそうで一安心。ここもバックで下った。ここが本コース唯一の危険個所で、あとは藪漕ぎが問題になる程度だ。

 少しだけ灌木藪を漕ぐと再びナイフリッジだが僅かな登りで問題なし。すぐに平坦な尾根に変わって残雪が登場、格段に歩きやすくなった。820m峰にかけて一面の雪原が続き、820m峰で尾根は左に曲がる。ピーク付近は藪が出ているので雪のある西斜面をトラバースし藪をパスする。その先で僅かに藪が出るが東側に雪庇が残り藪が回避でき、なだらかな尾根を下っていくと雪に埋もれた林道を横断。林道と言っても路面は全く見えず、樹林がそこだけないので林道だと分かる程度。ここは風が来ないので休憩に最適だった。

 休憩を終えて出発。最初は雪が豊富だが高度を下げると徐々に雪棚の崩壊個所が増えてきて尾根上の灌木藪を漕ぐことが多くなり、最初の540m鞍部より先は延々と藪漕ぎが続くようになる。西側斜面で残雪を利用できる個所もあるが多くはなく、すぐに尾根上の藪に戻ることになった。この尾根は傾斜がなくほぼ水平移動なので、重力の助けで藪を漕ぐこともできない。

 560m峰ピーク付近だけ残雪があったが、下るとまた雪が落ちて灌木藪が。こんな状態が続くなら適当な尾根で芋川沢に下ってしまおうかとも考えたが、水量不明で対岸の林道に渡れる保証がないのでやめておいた。この判断が正解だったのかは今でも不明である。

 554m峰では東に大きな尾根が分岐、水上沢沿いはまだ雪がたっぷり残って藪から逃げられそうだが、ここを下ってしまうと車までの歩く距離が長すぎるので、当初計画通り尾根を北上する。次の540m峰でようやく雪にありついてほっとする。僅かな尾根の幅や傾斜の違いで雪が残るか残らないかの差が生じるようだ。もう1カ月早ければ藪皆無かな。

 486m肩で北西に進路を変更、まだ雪は続くが、ここから見下ろす380m峰付近と、そこから西に落ちる尾根は雪が落ちて藪が露出している。あれを行くのは気が進まないので、地形図を見て420m肩で西に分岐する尾根に乗り、健保センターよりやや手前で芋川沢右岸に下るルートに変更した。

 486m肩の下りの西側斜面は杉の植林で尾根上は灌木ではなく笹藪が出ていた。この後の藪が全部笹だったら楽になるのだが。420m肩で雪が残った左の尾根に乗り移り、しばし自然林の尾根を下り、既に見えている健保センターを目標に右に屈曲すると西側斜面は杉植林、尾根上は雪が落ちた灌木藪に変わる。右手の谷は雪が残っているのでそちらを下ろうかとも思ったが、雪が割れた場所も多くクレバスにはまりそうで諦めた。それに最後は砂防ダムがあって高巻きするのが面倒そうだとの判断も理由だった。

 藪尾根にもたまには雪が乗っていて助かったが、もう少しで尾根末端というところで傾斜がきつくなり、垂直に近い雪壁で尾根を下ることができず、尾根を少し登って西側の植林帯に逃げて下った。ここも傾斜が急でルートを選びながらとなるが、地面はほとんど雪に覆われ藪は皆無なので今までと比較すれば劇的に歩きやすくなった。これならもっと早く植林に逃げて下った方が良かったかもしれない。

 芋川沢右岸に降り立ち、橋を目指して下流に歩く。ここまで来ると右岸も左岸も切り立った部分は無く、川縁を安全に歩くことができた。川は河川改修でコンクリートの溝の中を流れていた。最後に1mほどの雪の壁を飛び降りて車道に降り立つ。登りで使った斜面には私の足跡がくっきりと残ったままで、ちょっと笑える光景だった。

 

 

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